お陰様でご好評を頂いておりますクイールノートに、マーブル仕様が加わりました。
満寿屋のクリーム紙を使用した本文紙(中身の筆記用紙)の書き心地の良さはそのままに、表紙にはマーブル職人が手作業で一枚ずつとった本物のマーブルペーパーを使用しています。
英国のコッカレル工房で、熟練のマーブラーによって生み出されるこのマーブルペーパーの美しさは、日頃印刷物に囲まれて暮らす私たちの目を驚かせ、和ませてくれる不思議な力を持っています。
万年筆のために抄かれた上質な紙に書く喜びはもちろんのこと、一緒に時を重ねてゆく愉しさも味わって頂きたいという思いを込めたノートです。
■ 初代クイールノートとの違い
モデル | クイールノート(初代) | クイールノート マーブル |
---|---|---|
サイズ | (A5なし) | A5 |
A6 | A6 | |
本文紙 | 満寿屋のクリーム紙 | 満寿屋のクリーム紙 |
罫内容 | 5mm方眼 | 8mm横罫 |
罫線の色 | ダークグリーン | セピア |
本文の枚数 | 120枚(240ページ) | 152枚(304ページ) |
その他 | しおり・バンド付き | しおり付き・バンドなし |
アサヒヤ紙文具店オリジナル / 日本製
最初にご紹介させて頂くのは、2サイズご用意したうちの大きな方であるA5サイズです。
A5サイズは、一般的な書類サイズの「A4」の半分の大きさです。
クイールノート マーブル A5 では、本文(中身の筆記用紙)のサイズをA5として作りました。
これにより、控えにコピーを撮るようなニーズがあった場合にも拡大・縮小を楽に正確に行うことができます。
また、見開きがちょうどA4サイズになりますので、なにかと使い勝手が良いのではという思いを込めました。
表紙は、通常の上製本と同様に、本文の周囲より数ミリずつ外側までカバーしていますので、本体サイズとしてはA5判よりも少し大きめになります。 サイズなどの仕様の詳細は、下記の通りです。
こちらは、小さな方のA6サイズです。
A6サイズは、上でご紹介の「A5」の半分の大きさです。 コピー用紙などで一般的なA4から見ると4分の1の面積になります。
このクイールノート マーブル A6 も、本文(中身の筆記用紙)のサイズをA6として作りました。
これにより、控えにコピーを撮るようなニーズがあった場合にも拡大・縮小を楽に正確に行うことができます。
また、見開きがちょうどA5サイズになりますので、なにかと使い勝手が良いのではという思いを込めました。
表紙は、通常の上製本と同様に、本文の周囲より数ミリずつ外側までカバーしていますので、本体サイズとしてはA6判よりも少し大きめになります。 サイズなどの仕様の詳細は、下記の通りです。
満寿屋のクリーム紙は、冒頭の「
満寿屋のクリーム紙とは
」の項目で申し上げた通りの経緯や製法で生まれた、書くための紙です。
プロ用の原稿用紙として生まれた紙というだけあり、様々な異なるブランドのインクを愛用する、万年筆のヘビーユーザーである作家からのプロとしての厳しい意見や指摘を取り入れながら改良を重ねてきた歴史があります。
その結果、多くの作家や万年筆愛好家から大きな支持を得てきました。
そのため、特に万年筆との相性は抜群で、比較的薄めの紙でありながら、インクのにじみや裏抜けには大変強い特性を持っています。 ただし、インクが抜けていなくても、紙の薄さのため筆跡が裏から透けて見える度合いは、厚い紙を使用したノートに比べますと認識しやすいので、気になる場合はインクの色などを工夫するとより使いやすいと思います。
万年筆での書き心地は、スムーズな書き味の部類に入るかと思いますが、フールス紙やバンクペーパーの感じを硬質感のある滑りとすれば、それを少しだけマットにして、ある程度の筆記感を残した、ほど良さを感じる書き心地です。
常用するにも適した ごく自然な味わいで、やみつきになる方が多いことが理解できる書き心地です。
インクの吸収スピードは、割り合い速い方です。
また、さすがと言えるほど各社インクへの対応力に優れており、滲みにとても強い特性を持ちます。
筆跡が滲みにくいため、万年筆のペン先の本来の線幅に忠実な筆記線が得られます。 バンクペーパーのように多少の滲みによる線の太りが味わえるタイプと反対の印象です。
そして、とても美しい濃淡が楽しめる紙でもあります。
罫線は、用途の広い横罫となっています。
行の太さは、太めの万年筆でも書き込みがしやすいよう、ゆったりめの8mmとしました。
クイールノート マーブルの罫線の色は、落ち着いたセピア色としました。
様々な色のインクでのご使用を考慮して、決して邪魔にならず落ち着きを感じる色味を作るのに時間をかけました。
茶系にありがちな赤っぽさを出来る限り抑えつつ、セピア色に見えるぎりぎりのところを狙いました。
数百年前に書かれた写本の没食子インクが古くなって茶ばんだ様な、エルバンのココアブラウンの渋い茶色の様な、やや灰色がかった枯れた感じになりました。
このような色味を、色味を変えずに薄くした特色インクで印刷しましたので、控えめな中にも個性的な罫色に仕上がったと思います。
どこのページを開いても開きやすいという事は、ノートのとても大切な性能のひとつで、使いやすさに大きく影響すると思います。
このノートの製本は、紙を「V」の字に折り曲げた折り返し部分を糸でかがった束をいくつか作り、それらを束ねて一冊のノートに仕上げるというものです。
ノートを使っていると、途中に時々 真ん中に糸が見えるページが出てきて、そのページは明らかに他のページよりも開きが良い感触があるかと思います。
クイールノート マーブルでは、この束ねて連結する前のひと束の枚数を少なくすることにより、ノートのどこの部分でも開きやすくするための工夫をしています。
具体的には、全部で152枚(304ページ)になる本文紙を、19の束を連結する形で構成しています。 ひと束あたり、実にたったの4枚の紙を「V」の字にして中央を糸で綴じています。
4枚を「V」の字にして8枚、8枚 × 19束で 152枚となります。
言わば、関節が19個もあるような状態です。
それに加えて、連結した束の背の部分を補強する接着剤には、「PUR」という新素材の糊を使用しています。
この糊は、充分な強度があるにもかかわらず、従来品に比べてかなり優れた柔軟性を持っているのが特徴です。
そのため、このように補強のために背固めをしても、開きやすさの邪魔をしないという利点があります。
この選択は、満寿屋のノート「MONOKAKI」で使われた技術ですが、クイールノート マーブルにも使用させて頂きました。
一方、いくら中身の本文紙が開きやすく出来ていても、それをカバーする表紙がゴワゴワしていては、せっかくの性能が発揮できなくなってしまいます。 そこで、背の部分には芯材を入れずに製本しました。 硬い芯が無い状態で、表面材が直接中身に接着されていますので、中身の開かれ方に応じて背表紙が追随する動きをします。
もちろん、背ではない表紙の部分には、充分な強度の芯材を使用しています。
立ったままでの筆記など、台の無い状態で本体を保持して筆記するような場面でも、たわんだりせず、しっかり支えられるよう配慮しました。
試しに、開いたクイールノートを片手に持った状態から、サッと閉じてみて頂くと、空気の壁を感じるような、ソフトな「パタン」という上製本らしい音と手応えを感じることができます。
背と角の部分の表面材には、ブラックのビニールクロスを使用しています。
これは、初代のクイールノートの表面材に使用しているものと同じ生地です。
主に辞書などの重量級の書籍に使用されるジャンルのもので、通常よりも高級なグレードのものです。
半光沢の表面には、うっすらと絹目が見えており、無機質なビニールビニールした感じがありません。
爪で多少ひっかいても傷になりにくいほどスクラッチに強く、それでいてゴワゴワせずに柔軟性がある素材です。
初代のクイールノートでは表紙を全面ビニールクロスの装丁として耐久性を高め、バンドを付けることでカバンの中などでのページの傷みを防ぐ仕様でした。 これは機動性や携帯性を重視したためで、ページ数も取り回しのしやすい240ページとしていました。
一方、今回のクイールノート マーブルでは、手作業で一枚ずつ写し取った本物のマーブルペーパーを表紙に使用することによって、二つとして全く同じパターンが存在しないというオリジナリティーと持つ喜び、使い込んで熟成させる愉しさを追求しました。
せっかくの豪華仕様ですので、少しでも長くご愛用頂けたらと思い、ページ数も304ページとしました。
その他の部分では、しおりは初代と同様のものを採用しています。 通常のノート・書籍用の素材ですと、ほつれてボサボサになってしまう事が多いので、いつまでもシャープであって欲しいと思い、サテンのリボンにしました。
両面サテンですので、表裏の区別なく気持ちよくお使い頂けると思います。
また、クイールノート マーブルでは、花布(はなぎれ)を追加しました。
花布は機能的な役割というよりは装飾的な意味合いのものですが、高級書籍のような雰囲気が感じられ美しいものですので、ぜひとも付けたいと思っていました。
表紙を開いてすぐの見返しの紙は、初代と同様に「スーパーコントラスト」という銘柄の紙のブラックを使用しました。
まさに「真っ黒」といえる、とにかく黒さの際立つしっかりした紙です。
製本とは直接関係ないのですが、今回はボックス入りの仕様といたしました。
マーブル職人が一枚一枚、水面にパターンを作り写し取った貴重なマーブルペーパーを表紙に使わせて頂いたので、それを大切にお届けしたいという意味と、お客様が箱を開けた時に初めて目に飛び込んで来るマーブル模様の美しさに驚いて頂きたいという思いを込めました。
また、箱入りですと、贈り物としても安心してご利用頂けます。
現在では、インターネットも盛んになり、それこそ何でも手に入る時代になりましたが、一定以上のこだわりをお持ちのかたへのギフトとなりますと、私もいつも頭を悩ませてしまいます。
表紙に使用したコッカレルのマーブルペーパーは、イギリスのコッカレル工房で作られています。
現在、日本では輸入されなくなってしまいましたが、現地では代々その技法が受け継がれ、作り続けられています。
もちろん機械印刷ではなく、水面に絵具でパターンを作り、それを紙に写し取って一枚ずつ作ります。
このように、量産には程遠い技法でゆっくりと生産されるものであり、また手作業で慎重に紙に写し取る技法のため必然的に原紙のサイズもそれほど大きいものにはなりませんので、現代ではこの紙を使って製品を作るととても高いものになってしまうという側面があり、日本では認知度や需要の少なさという面から輸入されなくなったのではないかと思います。
このような状況での原紙の確保、また出来上がった製品の価格をノートとしての許容範囲に収めることが出来るかどうかという冒険もありましたが、思わずチャレンジせずには居られない程の魅力を持つ紙でした。
最初にこのマーブル紙に出会った時、見つめても見つめてもまだまだ深く織りなされるパターンに釘付けとなり、ルーペまで持ち出して観察してしまいました。 ルーペで覗いても、まるで人間の目の解像度を遥かに超えているように感じられ、本当に人が作ったものなのかと思うほどに緻密で、引き込まれるような感じがします。
すっかりこの紙の虜になってしまった私のせいで、製本に関わってくれた職人さんたちには大変な苦労をかけることとなりました。
マーブルペーパーの原紙には細かい気泡がそのまま写っていたりもしますが、大きな気泡やマーブル職人さんの指の跡などが付いてしまっている箇所は避けて使ってもらいました。
通常なら、生地から表紙を切り出す時は、無駄なくきっちりと取れるだけ取りますが、今回はそうは行きませんので一枚一枚よく確認しながら取れただけの枚数で進めてもらいました。
また、マーブルは当然印刷インキではなく絵具で作られていますので、製本の過程で手の湿り気や摩擦によって傷めないよう、皆さん手袋着用で慎重に作業をしてくれました。 これは私からのお願いではなく、試作の段階での思い付きから自発的に行ってくれたものでした。 とても感謝しております。
色味にこだわった罫線の印刷では、私が万年筆用のインクを混ぜたり薄めたりして作った色で実際のクリーム紙にペン書きした見本を基に、満寿屋さんに忠実に再現して頂きました。
このようにしてクイールノートマーブルが完成した頃、計画・試作の段階から発売を楽しみにしてくださっていたお客様から、貴重なご意見を頂きました。
それは、せっかくのマーブルペーパーの表紙を大切にしたいし、また自宅だけではなく職場などへの外出時にも気軽にカバンに入れて持ち歩きたいので、ブックカバーをかけられないか、というものでした。
確かに、絵具で表現されたマーブルペーパーは湿気や摩擦に弱く、強く擦ると色移りしたり擦りむけたりしてしまいますので、なるほどと思い、用意させて頂くこととなりました。
最初の考えでは、市販の既製品をサイズ調整しようと思いましたが、試作してみますと「辺」のエッジ部分の手に当たる感じが硬すぎて気になりました。
コッカレル工房は、英国東部のケンブリッジに代々続くマーブル工房です。
初代のダグラス・コッカレル氏が1897年に工房を持ち、依頼代々受け継がれて現在に至ります。
コッカレル工房のマーブルペーパーは、マーブルペーパーらしい華やかさを持ちながらも決して派手過ぎず、上品な色使いと落ち着いた雰囲気が特徴です。
このページの少し上の部分でも触れましたが、マーブリングの技法は原理はシンプルなように見えても、実際にはかなりの熟練を要するもので、ベースになる液体の粘度や絵具の濃さの調整ひとつをとっても、多くの経験が必要と言われています。
写真の点数が少ないため大まかになってしまいますが、その工程をご紹介いたします。
液体は水ではなく、アイルランドの海岸線で採れる「カラジーン・モス」という海草を煮て作るもので、少し粘度があります。
日本の「墨流し」では水を使いますので、水面の動きは非常に流動的で意図した通りにパターンを固定するのは困難ですが、マーブリングではこのように粘度のある液体を使いますので、ある程度のパターンのコントロールが可能です。
絵具は下に沈まないようにそっと置く必要がありますが、この際は液体のプールとほぼ同じ面積に作られた格子状のフレームに規則的にたくさんの棒が配置された道具を使い、その棒の全ての先端に付けた絵具を一度に液面に置くようにして行ないます。
多色の場合は、先に置いた色の中心や、また別の所に繰り返し置きます。
長い棒に沿って等間隔に細い棒が配置されたクシ状の道具を使って絵具を動かし、パターンを作って行きます。
例えば、上から下まで通したらクシの目を半コマずらして今度は下から上に、また時には左から右へといったように、動かすうちにみるみるパターンが複雑になって行きます。
クシの動きは直線だけでなく、うねうねと蛇行したり、くるりと回したりと様々ですが、クシの間隔や動かし方は全て計算されています。
それでも、液体の上に人間が作る模様ですので、パターンは同じでも一枚一枚は微妙に異なっており、二つと同じものは生まれないという味わいがあります。
残念ながら、この工程の写真がありません。
紙は全くの平らではないので、一体どうやって気泡などを入れずにきれいに写し取るのか、とても興味深いところです。
別の資料によると、紙は対角のコーナー2ヶ所を手で持ち、片方を液面に付けたらその手を固定したまま対角線の方向に向けて徐々に付けて行く要領でした。ちょうど、台紙からシールをぺろんと剥がす時の逆の動きに似ていると思います。
文章で書くとこれだけですが、実際にはかなり熟練の要る作業のようです。
紙には事前に下処理がしてあり、絵具の定着を良くする工夫がされています。
これは、明礬(みょうばん)を溶かした液体をスポンジなどで塗布し、乾燥させておくというものです。
絵具を写し取った後の紙を引き上げ、斜めになった台に置いて水で流し、付着した液を洗い落とします。
この時、紙を引き上げた後のプールの液体の表面には、紙のあった所だけすっかり絵具の姿が消えてしまうほど、しっかりと見事に絵具が紙に移ります。
明礬での下処理の効果であるとは思いますが、引き上げる時にずれ動いて乱れた絵具は再付着をせず、洗えばすっかり落ちてしまうのも本当に不思議です。
この後、紙をワイヤーに掛けて水を切り乾燥させます。
その美しさに惹かれて興味を持つようになったマーブルペーパーですが、上記のような工程を調べるうちに、不思議に感じる部分も多くなってきました。 例えば、下処理の明礬の効果などです。 また、どうして隣り合わせた絵具同士が混ざって色が汚れたりしないのか、といった部分も不思議でした。
やはり、実際にやってみないと分からないと思いました。
ところが、マーブリングのキットなどを買って来て結果だけを求めるのなら方法はいくつかありましたが、仕組みを理解するために一から自分で試してみようとしますと資料がなかなか見つかりませんでした。
結局、絶版となった古い本を図書館で借りたり、オークションで手に入れたりということになりました。 これらの資料は、本当に参考になりました。
資料によりますと、使用する道具や材料に関しては、意外と手に入れやすいものであったり、工夫でなんとかできそうなものがほとんどでした。 この段階で、ということはやはり重要なのは技と経験ということになりそうだと、少し怖じ気付きましたが、まずはやってみることにしました。
実際にやってみますと、この世界の奥の深さを実感することができました。
まず、紙に下処理をするための明礬(みょうばん)ですが、これは漬物を作る時の材料として簡単に手に入りました。
液体を入れるプールのような平たい箱(日本の製本業界ではフネというらしいです)には料理用バットを利用し、クシは発泡スチロールの棒に等間隔に爪ようじを差して作りました。
絵具にも実は仕掛けがあり、「牛胆液」という牛の胆のうから採った液体を絵具に混ぜて、水面での絵具の拡がり具合をコントロールするのだそうです。 これは以前に製本職人さんからも教えて頂いておりましたが、まさかそのような液体は手に入らないだろうと半ば諦めていました。
しかし、今回集めた資料によりますと、これは「オックスゴール」や「オックスギャル」という名前で、画材屋さんに売っているとのことでした。 求めに行ってみますと、なんと画材でおなじみのホルベイン社から売られており、すぐに手に入りました。
このようにして、ある程度の材料が揃いましたが、問題は肝心のベースになる液体に使う「カラジーン・モス」の入手でした。 こればかりはどこにも無く、手に入りませんでした。
結局、インターネットで調べて「カルボキシメチルセルロース」という粉末状の増粘剤を水に溶かして代用してみることにしました。
材料が揃いましたので、いよいよ実践してみることになりましたが、結果は惨たんたるものでした。
まず、明礬水で下処理をした紙がふやけて波打ってしまい、電話帳やガラス板を使って平らに乾燥させるのに苦労しました。 しかも出来上がった紙は、明礬が浮き出てジャリジャリしています。
また、ベースの液体を作るのにも増粘剤がすぐには溶けず、台所で2時間も背中を丸めてダマを潰す作業に没頭することになりました。
結果としてはこんな有様でしたが、一連の作業を通じて、液体の粘度の調整や絵具の濃度などの一つ一つの要素にかなりの経験が必要であることなど、その難しさはよく理解できました。
後日、改めてベースの液体と絵具の相性についてもっと詳しく調べようと、水彩絵具やガッシュ、ポスターカラーからインクまで、色々と試してみましたが、その時にやはりベースの液体の重要性を再認識しました。
というのは、現在使用している増粘剤のベースでは、どの絵具も拡がったパターンのエッジがきれいにならずギザギザした状態になり、牛胆液の量を加減してもコントロールが上手くいかないという現象が共通していたからです。
現状では、液体の表面が、大げさに表現するとゼリーソースや生コンの表面のように不均一になっている印象を受けます。
私のイメージでは、「もずく」の入っている液体のように、表面が美しい鏡面で、動いても表面が滑らかで粘りがあるものが向いているように思えます。
やはり、ぜひカラジーン・モスで作ったマーブル液で試してみたいところです。 資料によりますと、これを粉末にしてあり煮なくても使える「カラギーナン」というものもあるそうなので、これを探すか、昔の製本職人さんに教えて頂いたこんにゃくを煮る方法なども検討したいと思っています。
もっとも、そこまでやって結果が同じなら、単に私が下手なだけということになりますが、それでも知りたいところです。
こうして実践してみますと、マーブルペーパーの制作がいかに大変なもので技術と経験を要するものであるかを、よりリアルに感じることが出来ました。
ましてや、コッカレル工房のように、商品として決まったパターンを繰り返し同じ品質で生産し続ける技術の高さも素晴らしいものであると実感しました。
最後になりますが、上記の体験の際に参考にさせて頂いた書籍について紹介させて頂きます。
他にも多数存在するかとは思いますが、ご興味のあるかたに少しでもご参考になりましたら幸いです。
また、最近になって非常に貴重なビデオを発見しました。
なんと、コッカレル工房を取材した1970年のドキュメンタリー番組のアーカイブがイギリスのウェブサイトにありました。
コッカレル工房でのマーブリングの様子を、動画で詳しく見ることが出来ます。 ご興味のあるかたに、ぜひお勧めいたします。
ビデオの一番最後のシーンには、クイールノートマーブルと同じコーナー付きの仕様でマーブル装丁された古い本も登場しますが、ご先祖様に会えたようで、これには本当に感動しました。
(下記リンク、新規ウィンドウで開きます)
East Anglian Film Archive: The Art Of The Marbler, 1970
このビデオのおかげで、このコラム上段の「コッカレル マーブルペーパーについて」の編集当時に不明であった点もいくつか明らかになり、当初よりも詳しい内容にすることが出来ました。 とても感謝しております。
それと同時に、これまで感じていたマーブリングに関する謎のいくつかは解けましたので、いずれまたチャレンジしてみたいと思っております。
● 商品写真および筆記サンプルの色は、実物と異なって見えることがございます。
● 表紙に本物のマーブル紙を使用しておりますので、色落ちや色移りはございます。
● マーブル紙は一枚一枚手作りのため、同じパターンでも細部は一冊毎に異なります。
● 裁断の箇所によりパターンの見え方は見本と異なりますのでご了承ください。
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