インク
ink
万年筆や つけペン、ガラスペンなどの大切なパートナーであるインクには、実に様々な種類があります。
また、実際に使用してみると、組み合わせる筆記具の太さやインクの出具合い、またそれを受け止める紙質などによって、同じインクでも様々な表情を見せてくれます。
ネーミングやボトルの外からでは分かりにくい個性を、出来る限りお伝えして行きたいと思います。
写真: エルバン ミントグリーンインクと
ガラスペン / フランス製
色の見比べが同じページ内で出来るようにと思い、縦に長いページになっております。
遠い項目にすぐに移動するには、下記のリンクをご利用ください。
ページ内でジャンプできます。
J.HERBIN
Made in France (エルバン / フランス製)
エルバンは、1670年にパリで生まれたシーリングワックスとインクの老舗ブランドです。
1700年にはインクの本格的な生産を開始し、自然の中の豊かな色のイメージに着想を得たインクは定評を呼び、現在に至っています。
すばらしい発色はもちろんのこと、ネーミングのロマンもお楽しみいただけるインクです。
■画像をクリックで拡大
エルバン トラディショナルインク
● 全30色のボトルインク
● 万年筆 ・ つけペン ・ ガラスペン向き
● 内容量: 30ml
● ボトルサイズ: 約 50 x 50 x
高さ53
(mm)
● ペンを置けるくぼみがついています
税込価格 1,870円/個
■ 色と筆跡の見本につきまして
筆記サンプルは、左から、「細字のつけペン」、「線幅1ミリのカリグラフィーのつけペン」、「平筆」の順で書いたものです。
紙は、ライフ社の 「L-ホワイトライティングペーパー」 を使用しています。この紙は、ノーブルノートに使用されているクリーム紙のホワイトのバージョンで、滲みに強く、本来の線幅に忠実な描線を得ることができます。
筆記サンプルの画像をクリックしますと、拡大してご覧頂くことができます。
拡大画像の中に配置したインクボトルの写真もあわせてご覧ください。
撮影の直前にボトルを振ってからフタを開けてすぐに撮影し、ボトルの口にうっすら残ったインクと、開けたフタの裏に付着しているインクの状態も、ぜひご覧頂きたいと思いました。
インクを使うときの、おなじみの光景ですが、そんなところからも少しでもリアルに色の特徴をお伝えできましたら幸いです。
● 撮影やスキャンの環境および、お使いのディスプレイの状況などで、
色が実物と異なって見える場合もございますので、ご了承ください。
HB13077
【ヴィオレパンセ】
1966年まで、フランス全土の小学校で指定色として愛用されてきたパンジーの紫色です。パンジーの花言葉は、「思慮深い」。
HB13008
【グリヌアージュ】
「灰色の雲」というネーミングです。
灰色ですが、水っぽい感じはあまりなく、しっかりとした発色を見せています。
HB13009
【ブラック】
「黒い真珠」。 サンプル右のベタ部では濃淡が見えますが、線や文字では濃淡は見えにくく、ハッキリした発色です。
HB13012
【ブルーアズール】
「青い空色」です。
明るく淡く、やさしい色合いです。
HB13013
【ツルニチソウ】
水色系の中では割合ハッキリとしていて発色の良い鮮やかな水色です。花言葉は「幼なじみ・楽しい思い出」など。この花は正しくはツルニチニチソウというそうです。
HB13015
【忘れな草ブルー】
やや紫の入ったブルーを、少しだけ灰色がけて落ち着かせたような色合いです。
花言葉は「誠の愛」など。
HB13016
【サファイヤブルー】
一般的な青インクの位置付けで、店頭でも最初にご指名を頂く事の多いインクです。鮮やかで発色の良いブルーです。
HB13019
【ナイトブルー】
ブルーブラックのようにダークトーンのブルーですが、ただ黒っぽいだけでなく、ベルベットのような上質感のある色です。
HB13022
【イナゴマメレッド】
細い線の状態では、やや朱色がかって見える時もあり、なんとも言えない素晴らしい赤色です。 滲み易く、紙を選ぶ傾向があります。
HB13028
【ブルゴーニュレッド】
落ち着いたトーンの赤ですが、赤味がしっかり残っていて暗い感じがしない色です。上品なワインレッドという感じを受けます。
HB13031
【ライトグリーン】
鮮やかな黄緑色です。 細い線やインクの引けた所は、まぶしいハイライトとなり、インクの濃淡が楽しめる色です。
HB13033
【ミントグリーン】
ディアボロ ミント(ハッカ入りのレモネード)という原題です。青味がかった爽やかなグリーンで、見ていると本当に清涼感があります。
HB13036
【オリーブグリーン】
暗くはなく、枯れた感じのトーンで、オリーブの感じが良く出ています。 ハイライト部には黄色味が感じられ、濃淡が楽しめるとても味わいのある色です。
HB13037
【アイビーグリーン】
アイビー(きづた)の緑。 濃い緑ですが、それほど黒っぽい深緑ではなく、細い線でもハッキリ色が表現できます。
HB13038
【モクセイソウグリーン】
緑がベースの青緑色といった印象です。 サンプルのベタ部では暗く見える部分もありますが、線や文字では意外と明るい発色です。
HB13039
【エンパイアグリーン】
普通の深緑とはひと味違い、緑青(ろくしょう)を濃くして枯らしていったような、青銅のような深みを感じる灰緑色です。
HB13041
【ビルマの琥珀】
恐竜の時代を起源とする、古さや美しさで有名なビルマ産の琥珀。ハイライト部は琥珀色に輝き美しい濃淡が堪能できるインクです。
HB13044
【ティーブラウン】
インクの引けた部分に、うっすらと感じられる黄色味のせいでしょうか、確かにコーヒーではなく、お茶の茶色です。
HB13045
【ココアブラウン】
原題直訳は「ブラジルのカカオ」。 一見、温かみのあるグレーに見える時もあります。 ほど良く枯れた、渋い茶色です。
HB13046
【アイランドカフェ】
中煎り豆くらいのコーヒー色に見えます。
インク溜まりの部分が乾いた輪郭には、フレンチローストのようなテカりが見えます。
HB13047
【ティエラ・デル・フエゴ】
マゼランが発見の際に先住民の焚火を見て火の大地と名付けた南米大陸の南端の島の名前。 大地のような赤茶色です。
HB13048
【ムーンシャドウ】
原題直訳は「月のちり」。あんこを紫色にして少し粉っぽくしたような色です。
暗めのトーンですが、不思議と冷たさは感じません。
HB13053
【ブトンドール】
BOUTON D'ORはキンポウゲの一種の花の名前で、直訳は「金のボタン」。輝くように明るい鮮やかな黄色のインクです。
HB13057
【インディアンオレンジ】
鮮やかなオレンジ色というよりは、少し茶色がかった熱い色に感じます。夕日のなかのグランドキャニオンの岩肌のようです。
HB13058
【アンカーブラウン】
直訳すると、「イカリのさび色」です。
鉄が錆びた時の赤味が絶妙に表現されており、インク溜まりの乾燥後の味わいは格別です。
HB13061
【テンダーローズ】
「愛情のばら」です。 優しさの中にも情熱を感じる鮮やかなピンク色です。 とても可愛い色味で、発色も良いインクです。
HB13064
【アンティークブーケ】
アンティークブーケは派手さを抑えた落ち着いた色のバラの一種。ほんの少し紫がかった、上品な大人の色という感じです。
HB13066
【シクラメンレッド】
テンダーローズを、濃くハッキリとさせた感じの色味です。紙質によって、滲みが目立つ場合があります。花言葉「はにかみ」。
HB13068
【オペラレッド】
オペラの荘厳さや伝統からの名付けなのか定かではありませんが、私は意外と客席の色かも知れないと密かに思っています。 渋く、重厚な赤です。
HB13078
【ラルム・ド・カシス】
やさしい紫色を少しだけ枯らした感じの色合いです。 「エンパイアグリーン」・「ココアブラウン」・「ムーンシャドウ」・「アンティークブーケ」に通じる、落ち着いた色味です。
PILOT
Made in Japan (パイロット / 日本製)
パイロットコーポレーションは、1918年に「株式会社 並木製作所」として創業した万年筆とインクの老舗ブランドです。
すでにお気付きかもしれませんが、パイロットコーポレーションでは、現在でもインクを 「 インキ 」 と表記しています。
夏目漱石の文章の中にも、インクが 「 印気 」 として書かれた文章があり、時代を感じさせる呼び方であると思います。
グループ会社には「パイロットインキ株式会社」という会社もあり、古くからインクの研究を続けてきた歴史を窺うことができます。
今でも、会話の中では「インキ」と発音することは割合ありますが、商品名や社名の表記に使用し続けているところに、万年筆の大切なパートナーとしてのインクに対するこだわりを感じるメーカーです。
■画像をクリックで拡大
PILOT 色彩雫(いろしずく)シリーズ
● ボトルインキ
● 万年筆 ・ つけペン ・ ガラスペン向き
● 内容量: 50ml
● ボトルサイズ: 約 w85 x d36 x h82
(mm)
税込価格 1,650円/個
■ 色と筆跡の見本につきまして
筆記サンプルでの使用筆記具や拡大ページの構成は、上記エルバンの時と同様になっております。
ただ、今回はボトルのフタの裏が黒色のものもあり、一部で色をお見せしにくくなってしまう恐れがありました。
そこで、拡大画像にはガラスペンに付着させた状態も添えています。
この色彩雫シリーズの色は、日本の美しい情景がモチーフになっており、一つ一つの色名も風情あふれる美しい日本語で題されています。
製品の箱の中には、メーカーからのメッセージが入っています。
その一部をご紹介いたします。
iroshizuku
【色彩雫】
日本の美しい情景から
日本には、美しい自然や景色が多く存在し
またそれ等にはとても美しい名があります。
iroshizuku-色彩雫(いろしずく)シリーズは、
その美しい情景から創造された彩り豊かなインキです。
さらなる書く喜びと楽しみをあなたに。
● 撮影やスキャンの環境および、お使いのディスプレイの状況などで、
色が実物と異なって見える場合もございますので、ご了承ください。
INK-50-AS
【朝顔】
パイロットのスタンダードのブルーよりも濃く鮮やかで、ハッキリとした青です。
朝顔の花言葉は「愛情・愛情の絆」など。
INK-50-AJ
【紫陽花】
うす紫色で淡く繊細な、まさに紫陽花の色です。 紫陽花の花言葉には、「辛抱強い愛情」などがあります。
INK-50-TS
【露草】
朝顔を少し薄くした感じの青です。
明るめのトーンですが、派手さはなく、落ち着いた上品な感じの色です。
INK-50-KO
【紺碧】
発色の良い、存在感たっぷりの青です。
濃い部分には深みがあり、ハイライト部分には爽やかさを感じます。
INK-50-TY
【月夜】
月夜の名にふさわしいダークトーンの青ですが、良く見るとほんの少しだけ青緑がかった色をしています。 これが、月の明るい夜のような安心感を演出しているのかもしれません。
INK-50-KJ
【孔雀】
ターコイズのように、少し緑がかった青で、全体のトーンは抑えめです。 インクが濃く乗った所は、ウォーターマンのブルーブラックの筆跡が酸化した時の青緑のようです。
INK-50-SY
【松露】
細い松の葉にも露が宿り、やがては消えてしまうという和の心たっぷりの風情ある名前に思えます。 実際の松の葉に見られる、ほんの僅かな白っぽさを感じ取ることができます。
INK-50-SHR
【深緑】
濃い緑色でありながら、ハイライト部分には若々しい元気さを感じることのできる、存在感のある緑色であると思います。
INK-50-KS
【霧雨】
冷たい灰色ではなく、鈍い中にもほんのりと温かみが感じられる色です。 濡れても構わないという、日本人の霧雨にたいする寛容な心を表現したものかもしれません。
INK-50-FS
【冬将軍】
霧雨とは対照的に、凛とした感じの灰色です。 エルバンの 「グリヌアージュ」よりも少し濃い色で、グレーといってもしゃばしゃばせず、しっかりとした発色を見せます。
INK-50-MO
【紅葉】(もみじ)
鮮やかに色づいたモミジの色です。
細い線では濃厚な朱赤色に見え、紙にもよりますが太い線では乾燥後の輪郭部に、わずかな黄金色を感じます。
INK-50-FG
【冬柿】
ボトルの中での透明感の割りに、書いてみるとしっかりとした発色を見せます。
トマトとみかんの間くらいの、暖かみのある、穏やかで優しいオレンジ色です。
INK-50-YU
【夕焼け】
赤とんぼを連想するからでしょうか、現在見る夕焼けというよりも、子供時分に感じた夕焼けを思い出しました。 ノスタルジックで、心温まる夕焼け色です。
INK-50-TT
【躑躅】(つつじ)
赤紫色に、つつじの鮮やかさを加えたような可憐な色味です。 メーカーの色見本では一見ファンシー系の色に見えますが、細くてフローの良いペンで書くと落ち着く感じです。
INK-50-YB
【山葡萄】
インク溜まりの部分は乾燥後に深みのある濃い紫色になります。 ペンが走って薄く乗った部分には、若々しさも少し感じられる色です。
INK-50-TK
【土筆】(つくし)
書いてすぐは少し赤紫がかった色をしていますが、それが書いているそばから茶色に変化して行きます。 乾燥後は、赤過ぎず明るめの程よい茶色に感じました。
INK-50-YG
【山栗】
少しだけ霧雨風の、灰がかった渋めの茶色に見えます。 エルバンのココアブラウンほどは灰がかって枯れた感じは抑えられていますが、渋く、常用しやすいセピア調の素晴らしい茶色です。
INK-50-KM
【秋桜】(コスモス)
紙の白さを上手に使いこなして味方につけたという感じのする、淡くやさしい色調です。 使用する紙によって、表情の変化を楽しめる色だと思います。
INK-50-MS
【紫式部】
パープルでもバイオレットでもなく、複雑すぎないシンプルで素直な紫のエキスを感じます。 昔からある、紙テープや折り紙の色を思い出しました。
INK-50-CHK
【竹林】
ハイライト部分に若竹のイメージがあり、全体では軽すぎず、不思議なコクを感じるライトグリーンに見えます。 インキ溜まりにも味わいがあります。
INK-50-IH
【稲穂】
渋い色味の中にも透明感があり、エルバンの「ビルマの琥珀」を一段と落ち着かせた感じです。 渋めの黄金のような味わいもあり、輝き出す直前の黄色味が絶妙です。
INK-50-TAK
【竹炭】
黒さを追求したというよりは、ややマイルドな感じの漂う黒色です。インクが濃く溜まって乾いた所は薄っすらと赤茶色の成分も見え、単純な黒とは異なります。
INK-50-SNK
【深海】
スモーキーで大人の雰囲気のある、鈍めのブルーです。使うペンのインクフローの度合いにより明るさの違いが感じられ、様々な表情が楽しめるインクだと思います。
INK-50-AMA
【天色】
「紺碧」の爽やかさを更に増したような、鮮やかで明るいブルーです。スカイブルーや水色までは明るくないので、文字としての存在感は保てると思います。
● 商品写真および筆記サンプルの色は、実物と異なって見えることがございます。