大井町のフルハルターさんで万年筆を購入した時のことです。
いろいろと試し書きをさせてもらい、私の筆記角度などを診ていただいているうちに、ふと気が付きました。
とても魅力的な色のインクで書いていたことに気が付いたのです。
コクのあるブルーをしていました。
どうしても気になって、できたらこれも購入したい。 自分が文房具屋であることも忘れ、そう思いました。 憶えて帰って仕入れようなんてケチな事は考えず、すぐに手に入れたいと思ったのです。
店主の森山氏は、インクビンを見せてくれましたが、そこには小さな紙ラベルが貼ってあり、オリジナルで何か書いてありました。
そして、それが既製品でないこと、熟成され濃度を高められたインクであることを教えてくれました。
やがて、森山氏の手によって私の角度に調整された待望のペンが仕上がり、毎日愛用するようになるのですが、ペリカンのロイヤルブルーがシャブシャブに薄く感じられます。 あのインクを見たせいです。
そこで、森山氏に教わった通り、自分でもやってみました。
森山氏はロッカーの中にビンの蓋を開けて置いておくと言っていました。
せっかちな私は除湿機の前に、蓋を開けてほこり防止に手拭いの切れ端でカバーをかけたインクビンを並べ、水分が飛ぶのを待ちました。
ところが、これがずいぶん時間がかかるのです。 |